ifの話

「もしも…」っていう空想語ったり、Reality話だったり、絵だしたり

アニポケ劇場 ~愛の日 チョコの日 鬼は外~

「もうすぐバレンタイン。全国の女子の皆さん、チョコはもう選びましたか?作る準備はどうですか?そして、男子諸君…チョコをもらうアテなどはありますか…?
 シゲルは続けた。
「僕?うんまあ、去年ももらってたし、たぶん今年も大丈夫だとは思いますけどね。ただ…」
 そう言って、彼は後ろの二人に目をやった。
「シンジとシューティーにはそのアテが無いんだよね」

「そんな二人にプレゼントだ」
 突如、タケシが背後から出てくる。そして、彼が二人に渡した物は…
「豆?」
「そう。これを浮ついたリア充どもにぶちまけば気分爽快」
「いや、節分もう終わったし」
「ただの豆じゃない。カカオ豆だ!」
「一体どんなルートで?!新種のバグ?
 シゲルが珍しくツッコんだ。
 本当に効果があるのか、試しにシューティーが使ってみる。
「普通に投げればいいんですか?」
「そう。鬱憤と憎しみを込めて、思いっきり…」
 言われたとおり、構えて、豆を、目の前の奴に…
「フォアタァ!!」
「いだっ!!」
(掛け声カッコ悪っ)
 豆がサトシの後頭部を直撃した。彼は涙目で抗議する。
「…で、どうだ、気分は?」
「そうだね…これってただの八つ当たりですよねッ!?」
 満足行かなかったようだ。
「何もないままブラックデーを迎えるのも嫌だろう?」
「何ですかブラックデーって!っていうかこんなんやってる方が空しいよ!!!」
 まぁそうだろうな、とタケシ。おふざけだったようだ。
「心配するなよシューティー。シンジもさ。俺たちがチョコあげるよ」
「そうそう。毎年いっぱいもらってるから、大丈夫だよ」
 見かねたサトシとシゲルが、救いの手をさしのべる。が、
「それこそ余計なお世話だよ!男からのチョコなんかいらないっ。ましてや人からもらった物なんて!」
「もらった物を粗末にするなんて最低だ!本当に俺らの事を想うなら、もらったチョコ全部食え!」

「ご、ゴメンなさい…」

「では、これより作戦会議を始めます」
 カスミが、ホワイトボードの前で言った。
「今回の議題は、このバレンタイン、どうしたら的確に思いを伝えられるか。早速ですが、何か意見のある人」
 ハルカが手を挙げた。
「やっぱり、手作りのハートチョコだと『本命かも』って思ってもらえるかも!」
「なるほど…そんな簡単にあいつが気づくわけ無いじゃない…
 ごもっともな意見だが、カスミが求めた答えとはちょっと違ったようだ。
 すると、管理人も手を挙げた。
「カスミは一体何を求めてるの?」
「サトシに、本命チョコだってわかってもらえる方法を見つけようと思って…」
「ゴメン、こんな事言いたくないけど、諦めた方がいいと思います
 管理人、はっきり言いました。カスミは撃沈し、ぺたりと床に座り込む。
「…で、でも、やっぱり手作りチョコもらって嬉しくない奴はいないよ、きっと。たとえサトシでも少しは気づいてくれるって!!大丈夫!!!」
 ヒカリが必死でフォローするが、「大丈夫」というセリフが何やらフラグを立てているような…
「…いいわ。とりあえずチョコは作ってみる。みんな、頑張るわよーっ!」
「オォーッ!!」
 女子達が盛り上がる中、管理人は見えない男子に向かって、届かないSOSを、精一杯送ったのだった。

「…というわけで、シンジに味見をしてもらいたいの」
 とヒカリ。
 何が「というわけで」だ、とシンジ。
「そもそも何で俺なんだ…」
「いや、だってアンタにチョコ渡す人なんて、この中にいないもん」
(お前もくれないのな…)
 人知れずショックを受けるシンジだが、ヒカリがそんなのを気にするわけもない。
 ハルカが小声で励ました。
「元気出して、友チョコあげるから…」
「…フン」

 さっそく、アイリスが一品目を出す。
「オッカの実100%よ!」
「というよりオッカにチョコ塗っただけじゃねーか」
 さすがアイリス、期待を裏切らない。
「あたしのなんてまだマシよ。後の三人のなんかチョコですらないもの」
「お前のもチョコじゃないぞ。そしてやっぱり奴らも期待を裏切らんな」

 とりあえず食べられないものは食べられないのでパスして、次へ。
「ハイどーぞ!」
 ハルカのチョコは…
(あ、普通だ…)
 見た目だけは普通。さて、そのお味は…?
ガリッ
「………」
「…………」
 チョコは割れません。
ガジッ
「……………」
「………………」
 それでもチョコは割れません。
バリンッ
 やっぱりチョコは割れません。
「……ちょっとイイか?」
「どーぞ」
 するとシンジ、床にチョコを置くと、ドダイトスをボールから出す(入るスペースは考えちゃあいけない)。
ドダイトス、三歩前に進め。一歩一歩全力で踏め」
「?」
 よくわからないけどやってみる。
 一歩踏むと、地震のような揺れが起こる。そうして三歩踏んだ。ちょうどチョコの上だった。
「よしもうイイ。戻れ」
 終始よくわからないままボールに戻されてしまったドダイトスだった。
 ちなみに、ドダイトスに全力で踏まれてしまったチョコだが…
「わぁ凄い!ヒビ一つついてないよ」
「でしょ?やっぱり万一のことを考えて頑丈にしておいたの。シュウにあげるのに、ボロボロのチョコなんて嫌だもの。…で、シンジ、感想は?」
「そうだな…」
 シンジは一呼吸おいたあと、思いの丈をぶちまけた。
「食えるかこんな固いチョコ!!」
 えー、とハルカ。いやこれはシンジの方が正論だ。
「何を入れたらこんなに固くなるんだ!ドダイトスってあれでも310㎏あるぞ!そいつが全力で踏んでもヒビ一つついてないとかもうギネス記録とれるだろ!!」
「本当?じゃあ挑んでみよっかな」
「すんなー!!」
 久々に大声を出したシンジ。
「…じゃ、じゃあ、口直しにあたしのチョコ…」
「ならない。その色は絶対に口直しにならない」
 カスミが持ってきたチョコは、ナスのような色をした物。
「何入れたんだこれは…」
「ベリブの実とか」
「スマン聞いた俺が愚かだった。…で、お前は?」
 さりげなくカスミのチョコをスルーしつつ、本命(?)であるヒカリに聞く。
「え。あるよ。変な形だけど」
「いやいや、変どころじゃないって。丸なんだかハートなんだかわからん。何だこの分裂しかけてるメタモンみたいな形は」
 他の三人と違って、ムッとするヒカリ。
「まぁでも色は普通だし、形だけじゃ味とかわからんし。仕方ないから試食してやる」
「…食べたくないならいいのよ」
 シンジは、蒼い目で思い切りにらみつけられた。
「でもお前が味見しろって言ったんだろ…」
「前言撤回!もうイイ!!」
 プイと後ろを向き、そのまま早歩きで去っていってしまった。
 机の上に、分裂中のメタモンチョコを置いていったまま。

 翌日。THE・バレンタイン。
「シンジが食中毒で倒れたぁ?!」
 ヒカリはシゲルの口から出た情報に目をむく。
「そう。何を食べたかは知らないんだけど…。あ、どうでもいいけど、何か譫言(うわごと)でメタモンがどうこうって言ってた。まさかあいつがポケモン食べるとは思えないんだけど…」
 苦笑いのシゲル。
 そのとき、インターホンが。
「あ、また来た。じゃあね。シンジは、たぶんそのうち帰ってくるから」
 どうやらバレンタインチョコが来たようだ。
「…メタモン…」
『何だこの分裂しかけてるメタモンみたいな形は』
 意外というか、滑稽というか、思わず笑みがこぼれてしまうヒカリだった。
 __悪戯半分で塩とかいろいろ入れてやったけど、来年からは普通のチョコでもイイかな。

「カスミからチョコもらったんだ~」
 シンジのお見舞いに来たサトシが、カスミからもらった、ハート形のチョコを見せびらかした。
「…どんな物だ?」
「いや、まだ食べてないから…ここで食べてイイか?」
「それはチョコ食って倒れた俺への嫌みか?」
 違うよと言いつつ、ちゃっかり食べてるサトシ。
「…うぐっ」
「?」
 サトシの顔が真っ青になった。まさか、チョコがあたったのか。
「…で、どんなチョコなんだ?」
 サトシは、チョコをシンジに手渡すと、トイレに直行した。
 ナス色のチョコの中には、ベリブの実と一緒に、ピーマン、ニンジンなどの野菜が入っていた。
 吐き気をこらえ、同封されていた手紙を見ると、こんな事が書かれていた。
『栄養のバランスを考えてみました☆』
「味のバランスも考えろ!!!」


~あとがき~
書けたぜベイベー☆
ちょっと、ラストの構想が曖昧だった上に、すっげー長くなる予定だったので、間に合わなかったらどうしましょうかと…やはり早めにスタートしたのは正解でした。
そろそろ『シンジ→ヒカリ』が『シンジ→ヒカリ』になりそうだなぁなんて。
問題は、どうやって完全にくっつけようか。そう言うのが一番苦手ー((
何気に4000字オーバーです。さすが世紀の大イベント、ネタがモリモリである。
そしてシンジのツッコミが多いなぁ…叫ぶとかシンジじゃねー((じゃあ書くなよ