ifの話

「もしも…」っていう空想語ったり、Reality話だったり、絵だしたり

村と少女の思い出

 ―――この世界には、きっと素晴らしいものがあるに違いない…
 俺はできなかったが、ルリ、お前はその素晴らしいものを、必ず見つけるんだ―――
「ルリ、どーしたよ?」
「え?!」
 友人である、ピチューのマイが、私の顔をのぞき込む。
 いけない、まただ。
 つい考え事をしてしまう私。周りには、ボーっとしてるようにしか見えないらしいです。
 私はルリ。見ての通り、普通のツタージャです。
 ここ、十色村に引っ越してから、どれくらいの月日がたったでしょうか。
 いや、まだそんなにかかってもいないのかも。
 十色村は、山々に囲まれた小さな村です。
 時々商人が来て店を開くこともありあすが、基本的に買い物は隣町でします。隣町と言っても、山を一つ越えて行かなくてはなりません。買い物するのも一苦労です。
 それ故に、住人も少なく、十人しかいません。まさに名前の通りかもですね。…ちなみに、さっきのはダジャレではありません。悪しからず。
 でも、なんでそんな辺鄙な村に私が引っ越してきたのか。
 さっき頭に浮かんだ言葉は、今は亡き私の父が、私に最後に言ってくれた言葉でした。
 まだ小さかった私には、その言葉の意味はわかりませんでした。
 父は、ロマンチストと言うか、夢を持ってると言うか、非現実的な人というか。
 そんな父が言っていた『素晴らしいもの』。
 それが一体何なのか。未だにわかっていない私。このまま何もわからないまま、ただ日々を重ねていくだけなのでしょうか。

 思い返せば、今まで『生きていて良かった』だなんて思えた事なんて何一つありませんでした。
 あったとしても、それに気がつかなかったのかもしれない。
 ごく普通の家庭に生まれ、活発な兄に振り回されたり、大好きな母の手料理に感激したり、父の武勇伝を聞いたり…
 楽しかったけど、何か足りなかった。
 学校にあがると、なんだか怖くなってきました。
 それを感じたのは、私が三年生になった頃のことでした。
 当時入学してきた女の子のチラーミィ。とても可愛くて、性格も良く、頭もいい子でした。そしてとても個性的…
 でもその子は、みんなに忌み嫌われていました。
 その理由は、左目。
 その子の左目は、普通のチラーミィとは全く違う、赤い色でした。
 始めて見たときは、私も驚きました。その目は、異様な程の存在感を放っていましたから。
 その子とはすぐに仲良くなった。
 でも、その子の悩みは解決してあげられなかった。先輩なのに。友達なのに…
 当時その子は、イジメを受けていました。
 理由はもちろん、例の赤い目。そしてもう一つ、その子が大切にして、いつも持ち歩いていた万年筆でした。
 その子は、誕生日に父から貰ったというその万年筆を、肌身離さず持っていました。
 それを羨んだのかなんなのかは知りませんが、それがイジメの理由の一つに入っているようです。
 その子からその話を聞く度、私は、学校がこんなにも恐ろしいものなんだと思いました。
 でも、その子はいつも笑っていた。
 ある日、その万年筆を、クラスのガキ大将に奪われた時、その子は一瞬にして変わりました。
 その子の同級生で、それを偶然目撃していた子に話を聞いた、私の友人によると、何があったのか、いきなりすぎてわからなかったとか。
 でも、あの子は絶対に怒っていた。大事にしていた物を取られた、その怒りはよくわかります。
 私も、今付けているリボンを取られたら、昔なら泣くし、今でも嫌な気分になりますし。
 そして私は思いました。
「あんなに優しくていい子だったあの子が、そんなに恐ろしくなるなんて。学校って、本当に怖い…」
 それからというもの、私は、学校が嫌いになりました。
 不登校まではいきませんでしたが。
 なので私は、よくみんなに『世間知らず』だとか言われます。自分でも自覚はしています。
 ちなみに、イジメは、あの日からピタリと止んだらしいです。
 それから卒業後、私は中学校には行かず、一人暮らしを考えてました。
 もちろん家族は大反対。義務教育も終わっていないのに、そんな事が出来るわけ無い、と。
 自分でも、何故そんな事を考えたのか、今では理解不明です。
 でも、十四歳の頃、学校に通っていれば中学二年生の頃。兄と大げんか。その勢いで、深夜に家を飛び出しました。
 いわゆる『家出』というものです。
 そうしてたどり着いたのが、ここ、十色村です。
 こうして思い返すと、やっぱり自分って世間知らずだなと感じたりしますが。

 最近、あの子から手紙を貰いました。
 前から文通はしていました。
 なんでも、あの子が受験に受かって、私立の志望校に入学するとか。
 そこは、いろんな意味でとても有名な学校らしいです。
 今後、あの子に幸せが訪れますよう…
「ルリ!何回目だと思ってんの!」
「あ、ごめん。でも二回目…」
「気にすんな!それより、昨日のソプラちゃんのライブだけどさー…」
 マイは、大好きなアイドルの話をずっとしている。
 そういうのにはあまり興味はないけど、聞かないとマイが怒るから。
 ―――『素晴らしいもの』。その答えが見つかるのは、一体いつ頃なのかが、少し楽しみだったりする、今日この頃です。

今回は、旧作を一個投稿させてもろたz((
書いた日は…2012年4月25日って、4ヶ月前かよw
ただ単に出したかっただけです((
あの子って言うのは、アズラです((覚えてる人いるかな…?
いやしかし、この作品見てると、他のキャラに劣らず、ルリも理解不明な子だなぁと…
一応My・Coolroの後の話みたいな感じだけど、ネタバレになってないから大丈夫だよね。